モンゴルでの現地調査の様子
1. なぜこの事業に取り組もうとしているのか
セツロテックは、徳島大学の教員であった竹本龍也と沢津橋俊らが開発したバイオテクノロジーを産業へ実装するため、2017年に設立された徳島大学発のスタートアップ企業です。2019年からは、従来の「優れたオスとメスを掛け合わせる」統計的な育種法に代わり、遺伝子を化学的に直接書き換え、品種改良を進める「精密育種」という新しい技術に取り組んできました。
この技術を活用し、モンゴルでカシミヤヤギの品種改良を通じて砂漠化を止めたいというお客様からのご要望があり、名古屋大学等と共同で技術開発に着手しました。特許出願を経て、精密育種の技術が確立し、モンゴルでのプロジェクトも本格化した矢先、コロナ禍の影響でお客様の経営方針が変更となり、プロジェクトから撤退されることとなりました。
しかし、セツロテックはこのプロジェクトの価値を信じ、自社研究としてカシミヤヤギの開発を継続することを決定。その後、住友商事と資本業務提携を結び、現在も本プロジェクトを推進しています。
2. 事業内容
モンゴルは世界のカシミヤ生産量の約半分を占める一大産地で、カシミヤヤギの頭数は近年2500万頭近くまで増加しています。しかし、ヤギは草を根こそぎ食べる特性があり、砂漠化の一因とされています。モンゴル政府も国家戦略「VISION2050」の中で砂漠化対策を重要課題と位置付けています。
そこで私たちは、カシミヤヤギの精密育種によって、一頭あたりの生産価値を高める品種改良に取り組んでいます。モンゴルのカシミヤは15~18μmほどの繊維径ですが、13~14μmの「ベビーカシミヤ」と呼ばれるブランド繊維は、数倍の価格で取引されています。精密育種技術を活用し、より細い繊維を生産できるヤギの開発を目指しています。
ただし、ヤギの精密育種は収益化までに時間がかかるため、短期的な事業プランとして、育種プロセスに関連する「遺伝子検査事業」の事業化も調査しています。育種業界では、遺伝子型による選別手法「マーカー育種」が活用されていますが、モンゴルのヤギにもこのサービスを提供できないか検討中です。
また、モンゴル国内でカシミヤヤギの開発を進めるため、本プロジェクトに共感しご支援いただける現地投資家の方々も募集しています。

モンゴルのカシミヤヤギ
3. 誰と実施しようとしているのか(共創パートナーの紹介)
共創パートナーである住友商事株式会社は、世界63か国に127拠点を持つ総合商社です。同社のアグリイノベーションユニットは、農業・畜産分野における持続可能な発展と技術革新を推進しており、次世代の食料生産システム構築に取り組んでいます。
住友商事は、精密育種技術に着目し、2022年11月にセツロテックと資本業務契約を締結。現在は、ニワトリ・ブタなどの畜産動物や、酵母・酵素などの微生物を中心に、様々な分野で精密育種による事業開発を進めています。本プロジェクトも昨年から協力体制を構築し、住友商事のモンゴル・ウランバートル事務所のメンバーも加わり、現地の産官学パートナーとの調整や交渉を進めています。
4. 一般の方へのご協力のお願い
セツロテックでは、精密育種技術を様々な生物に適用し、高付加価値・高生産性の農畜産物や食品・化学品生産に挑戦しています。新商品の開発や生産のアップデートなどのニーズがございましたら、精密育種を活用したソリューションをご提案できるかもしれません。ぜひ一度、私たちとディスカッションし、新たな課題解決の可能性を探ってみませんか。

モンゴルのカシミヤヤギの集団

